大会プログラムについて(敬称略)
自由研究発表・事例報告プログラム(詳細版)
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大会1日目(午前)(20日午前)
大会1日目(午後)(20日午後)
大会2日目(午前)(21日午前)
大会2日目(午後)(21日午後)
1 課題研究・授業研究フォーラム
(1) 課題研究フォーラム2年目
≪北海道英語教育学会≫ テーマ: 小中をつなぐ文字指導 コーディネーター: 中村典生(長崎大学) 提案者: 明石一郎(千葉市立轟町中学校),津田裕匡(北海道教育大学附属釧路小学校),村尾亮子(雲南市立吉田小学校) 概要: 2014年10月に示された「グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言」の中には,「高学年では身近なことについて基本的な表現によって「聞く」「話す」に加え、積極的に「読む」「書く」の態度の育成を含めたコミュニケーション能力の基礎を養う。」という文言が盛り込まれた。現行の外国語活動では簡単なアルファベット文字を扱う程度で,いわゆる文字指導はタブー視されてきたが,小学校英語が教科化されれば,文字を扱うことになることがわかる。本課題研究フォーラムではこのような現状を踏まえ,すでに文字を扱う先進的な取組をしている小学校,またそのような小学校から生徒が入学してくる中学校の先生方から,これまでの取組の成果と課題について,現場目線でご発表いただく。特に2年目である今年は,今後どのような文字導入・文字指導がふさわしいか,という何らかの方向性を示すことができればと考えている。
≪中国地区英語教育学会≫ テーマ: Wowing to Act -- Rapport, Content, & Activities that Creatively Construct Student Agency コーディネーター: 高橋俊章(山口大学) 提案者: ティム・マーフィー(神田外語大学),梅地哲郎(山口県立華陵高等学校) 概要: People need a sense of agency (a feeling that they can act on the world and see changes) to stir up their motivation. If they can see themselves as an agent of an action and see their impact on others, they feel a sense of agency. If English lessons and activities are constructed based on the needs and interests of the students, they would feel like they have a say in the way that lessons evolve.
In the last year’s forum, we have posited that rapport, content and activities are the key ingredients of a successful English lesson. In this year’s forum, we will discuss some attempts to make English lessons where students have a sense of agency, spurred by choice. When students are given choices they tend to take ownership over the material. When teachers choose to follow at least some of the students’ desires, it democratizes the classroom, giving agency to students. First, Toshiaki Takahashi will provide context and background for this forum. Second, Tetsuro Umeji will give a mock lesson and show four steps of designing a wow lesson with students (conception of lesson ideas, gestation/planning, delivery of actual lessons, reflection on each of the steps) and some ways to find content and activities that would address, with a pinch of creativity, the importance of student agency in language classrooms. This is immediately followed by discussion where we will discuss what you liked about the mock lesson. Third, Tim Murphey, the author of Teaching in Pursuit of Wow! will present a few more exciting examples from his lessons using pair work and group work in which students have choice and can control and shape the directions of conversations, story telling and project work. Wishing to act is what all humans want, i.e. to act on the world and make our marks. Inviting this to happen in our English classes implies a creation of rapport, a sharing of power, fascinating content and activities, all that help students to use their agency to participate and shape the course itself with their own input and creations. (The presentation will be followed by a discussion and a Q&A session.)
(2) 課題研究フォーラム1年目
≪関西英語教育学会≫ テーマ: 「生徒の言語使用につながる英語授業」を考える コーディネーター兼提案者: 中田賀之(同志社大学) 提案者: 池野 修(愛媛大学),長沼君主(東海大学),興津紀子(神戸大学附属中等教育学校) 概要: 次期指導要領において,高校のみならず中学校においても「英語の授業は英語で行うこと」が求められつつある。「英語で授業」の本質は,「教師が英語で授業を行うとともに,生徒も授業の中でできるだけ多く英語を使用することにより,英語による言語活動を行うことを授業の中心とすること」である。本フォーラムにおいては,生徒の言語使用につながる英語での授業について理論と実践の両面から論じたい。高等学校で求められる英語での授業と中学校で求められる英語での授業の違い,英語で授業を行うこと・生徒に英語で活動させることに関して実践者が抱える課題,生徒の発話を促すためのティーチャー・トークの工夫,生徒の言語使用を促進する環境づくりと指導上の工夫,生徒の言語使用の状況を把握するツールとしての「教室内英語力評価尺度」などに関する話題提供を起点にして,聴衆の皆さんと一緒に,「生徒の言語使用につながる英語授業」について考える機会としたい。
≪四国英語教育学会≫ テーマ: 英語教室をワークショップに-自立した英語学習者の育成を目指して- コーディネーター: 長崎政浩(高知工科大学) 提案者: 小坂敦子(愛知大学),吉沢郁生(甲南高等学校・中学校),花岡民子(大学非常勤講師),宮城妙子(大学非常勤講師) 概要: 英語教室をワークショップに変えたい。そうすることで,現在英語教育が抱えているいくつかの問題点を解決する突破口になるのではないか。これが,私たちの問題意識であり,私たちの協働による実践研究のテーマである。
「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」(平成25年12月13日)以降,様々な施策が議論され,実行に移されている。小学校での外国語の教科化,高大接続(入試)改革,言語活動の高度化など,大小様々な施策が目白押しである。そのような中で,私たちの問題意識は,教え方/学び方の本質に関わる部分であると言える。講義形式による知識の伝授や一斉指導の効果と限界を見極め,学習者一人ひとりのオーナーシップの視点を回復させ,英語を学ぶこと・使うことの楽しさを学習者が実感できるようにする手立てを見つけたいのである。
では,教室をワークショップに変えるとはどのようなことだろうか。ワークショップは,「仕事場」や「作業場」を意味する言葉であるが,近年では教員研修などでも,広く用いられるようになってきている。講師による一方向の講義ではなく,参加者が主体的に学習に取り組む環境を整え,その体験の中で,新しい学びを生み出したり,問題解決を図ろうとするものである。教室をそのような場に変えることができないか。そうすることで,学ぶ楽しさを実感できる,自立した英語学習者を育てていく場になっていくのではないか。
私たちの課題研究の土台にあるのは,米国の初等・中等教育の国語教育の中で,1980年代以降,広まってきたライティング・ワークショップ,リーディング・ワークショップと呼ばれる枠組みにある(なお,この分野の優れた実践者ナンシー・アトウエル氏は2015年のグローバル・ティーチャー賞を受賞している。)。そこでは,一人ひとりの学習者が書くこと・読むことに,夢中になって取り組み,押しつけではない,アクティブ・ラーニングが生成する場となっているのである。子どもたちが,英語学習者として成長できるためには,何よりも英語で発信されたものを理解することが好きになり,「作業場」であるワークショップのなかで主体的に英語を使うこと,発信することが奨励され,そして,成長するための時間と場所の確保が不可欠なのではないか。「英語教室をワークショップに」という提案には,そのような問題意識が根底にある。
このフォーラムでは,まず,ライティング・ワークショップ,リーディング・ワークショップの基本的な考え方を紹介する。その上で,私たちが取り組んできた,英語教育への応用の試行錯誤の過程を報告し,その可能性や課題を参加者の皆さんと共に検討していきたいと考えている。
(3) 授業研究フォーラム
≪中部地区英語教育学会≫ テーマ: 4技能育成の基礎としての効果的な語彙指導を考える コーディネーター: 白畑知彦(静岡大学) 提案者: 福田恵(徳島県美馬市立江原中学校),加藤京子(東洋大学姫路中学高等学校),小島ますみ(岐阜市立女子短期大学) 概要:本フォーラムでは,効果的な英語の語彙指導に焦点を当てる。母語獲得であれ,外国語学習であれ,ことばを使用していくための土台には,語彙と文法がある。この両者が相応に身につかなければ,成人としての豊かなことばの運用は不可能である。しかし,本コーディネーターが20年前と1年前に2度,大学生を対象に実施したアンケート調査結果では,「英語嫌い」「英語が苦手」と回答した学生の「理由」には,「英単語が覚えられない」「英文法が分からない」が,20年の時を隔て,2度とも断トツツートップであった。それほど,語彙(と文法)学習に苦手意識を持っているのである。このような中学生,高校生,大学生の苦痛を少しでも緩和させなければならない。市販の単語集を与え,宿題として課し,翌週テストするのみの単語学習形態ではいけない。本フォーラムでは,3名の先生方が普段の授業で創意工夫なさっている「語彙指導の実践」を解説していただき,効果的な語彙の指導法についてフロアーの皆さんと意見交換していきたい。
≪東北英語教育学会≫ テーマ: 山形県小中高大連携プログラム(英語)の実践 コーディネーター: 佐藤博晴(山形大学),青柳敦子(山形大学) 提案者: 高橋典子(山形県教育庁義務教育課指導主事),佐藤英司(山形県教育庁高校教育課指導主事),渡邉 智(鶴岡市教育委員会学校教育課指導主事),本間 紘(鶴岡市立朝暘第三小学校) 概要:山形県では,英語教育の一層の強化・改善を図るため,平成27年度から平成29年度までの3年間,国の「英語教育強化地域拠点事業」を活用し,鶴岡市をモデル地区として小中高連携した英語教育の充実に取り組んでいる。このプログラムでは,①小中高10年間の系統立てた指導と評価,②英語教育と郷土学習をつなぐ,③児童生徒間交流によるあこがれの創造を3つの柱として展開している。研究協力校に指定されている4つの小学校では,3,4年生で外国語活動,5,6年生で「英語」学習を,短時間学習(モジュール学習)を取り入れながら実施している。また,中学校1校では,郷土のよさを紹介する表現活動を年間学習指導計画の中に位置づけて実施し,高校2校では,それぞれの特徴を生かし,高校生による小学校外国語活動の補助や小学生が素読している「荘内論語」の英訳,英語による修学旅行での郷土の魅力発信などに取り組んでいる。
ここでは,それらの取り組みの特徴や,成果と課題について紹介する。
2 シンポジウム
テーマ: 日本の英語教育の将来:効果的な授業の組み立て方について考える コーディネーター兼司会: 亘理陽一(静岡大学) シンポジスト: 松村昌紀(名城大学),佐藤臨太郎(奈良教育大学) 概要: 英語教師にとって,これまで示されてきた外国語教育のアプローチやメソッドは,「どのように授業を組み立てるか」という問いの中で初めて意味を持つ。コミュニケーションを重視する潮流の中で,学習者の英語運用能力の涵養に対してPresentation-Practice-Production (PPP)とTask Based Language Teaching (TBLT) のどちらが「効果的」かという議論も,具体的な授業の構成に妥当な限りにおいてその長所と課題を捉えなければ実りは乏しい。それ以前にわれわれは,両アプローチの考え方を本当に理解し,その上で自他の実践を語っていると言えるだろうか。本シンポジウムは,PPPとTBLTの基本的な考え方を改めて整理し,個々の言語活動のみならず,単元計画・年間指導計画のレベルも含めた授業づくりに対して,それぞれの立場から展望を示し,より良い授業実践の示唆を得ることを目的とする。そのためには,両者の言語観・教育観の異同や,(学習者の第二言語の)「習得/発達」をどういうスパンで捉えるか,日本の学校英語教育の現状との整合性や適当な導入時期といった根本的問題に触れざるを得ない。本シンポジウムの議論を通じて「PPPとTBLTのどちらが…」という問いの立て方に終止符を打ち,英語教育における「効果」自体を問い直す機会としたい。
3 ワークショップ
《ワークショップ1》質的研究入門
講師: 高木亜希子(青山学院大学) 概要: 本ワークショップでは,質的研究の入門者を対象に,英語教育学(応用言語学)における質的研究の理論と方法について理解を深めることを目的とします。質的研究では,立場の違いにより様々な視点や解釈を許容するため,方法論は多様です。質的研究の基本的な考え方,質的研究に適した研究の目的,質的研究のアプローチについて概観した後,具体的な研究例を取り上げながら,(1) 研究課題の設定と研究参加者の選択,(2) データ収集の方法,(3) データ分析・解釈の方法について紹介します。「研究課題をどのように立てればよいか」「研究参加者は一人でもよいか」「どのような分析の方法があるのか」など,質的研究の入門者が抱く疑問を解決しながら,質的研究の方法論について皆さんと共有していきます。本ワークショップを通して,教室での実践研究と実証研究の両方に役立つヒントが得られるでしょう。
《ワークショップ2》中学校入門期の英語指導
講師: 田口 徹(千代田区立九段中等教育学校) 概要: 今年の3月に中学校1年から高校3年(本校では6年)まで6年間教えた生徒が卒業しました。6年間教えてみて断言できることは生徒の英語力の伸びを支えていたのは中学校1,2年の指導と学習内容であるということです。この時期の指導が成功すると生徒は英語の基本的なルールを身につけることはもちろん,英語というものを単なる学校の教科としてだけではなく,コミュニケーションのツールとして認識するようになります。高校生になって文法が複雑になり,語彙が増えても自分自身の力で理解し伸びていく力が育っていきます。逆に英語が苦手な生徒はこの時期の内容がきちんと定着しておらず,おまけに単に目の前のテストの点を上げるためにしか英語に目が向いていないのでなかなか伸びを実感することができません。何事も最初が肝心です。研究会当日は3月に卒業した私の生徒が中学校に入って初めて受けた授業映像をご覧いただき,入門期に指導すべき内容を考えたいと思います。
《関東甲信越特別企画ワークショップ1》I Love Stories, Therefore I Love English
講師: Isabel Chang (ELT Expert & Teacher Trainer at Taipei City) A full time English teacher at Ren Ai Elementary school, and also an advisor from Taipei City Advisory Group for English teachers. 司会: 折原俊一(千葉大学教育学部附属小学校)
《関東甲信越特別企画ワークショップ2》ConCLIL(CLILと共に)-教員養成への活用・海外と日本の学校での実践-
講師: 柏木賀津子(大阪教育大学) 司会: 安達理恵(愛知大学) 概要: CLIL(内容言語統合型学習)には, 「EU海外教育実習」訪問先のフィンランドで6年前に出会った。大学院生や学生と共に, 理数や芸術の内容を英語で行う取組をしていたため, 早速その理論を読み, 英語研究室の枠を飛び出し, 物理, 美術, 体育の教員と意見を交わしてCLIL授業創りを試みた。それは, 大学教員としての毎日に, 大きな変革をもたらしてくれたと言える。EUの学校訪問では, classroomに深く入り込み, ディスコース分析から, 生徒の思考と言語が絡みあう場面をプロアクティブに創出するおもしろさを掴んだ。EUの研究者との議論をとおして, EFLで応用するためには, 「言語紐」(language strings)を絞る必要性も分かった。現在では, 4つのC(content, communication, cognition, culture or community)を生かし, 小学校英語教科化を視野に自治体での研修を行っている。ワークショップでは, (1) 教員養成に活かすCLIL(理数・異文化), (2) フィンランドやオーストリアでのCLIL(中高でのティーム・ティーチング), (3) 日本の学校におけるCLIL(平和へのメッセージ・食物連鎖)を文字指導と上手く組みあわせる工夫について,出来る限り体験的に, また, classroomの映像を用いて紹介すると共に,教員養成における効果についても言及する。
《関東甲信越特別企画ワークショップ3》量的研究の最前線-ベイズ統計とデータマイニング-
講師: 草薙邦広(広島大学),石井雄隆(早稲田大学) 司会: 山本長紀(木更津工業高等専門学校) 概要: 本ワークショップでは,量的研究に関する最近の動向について紹介します。従来の英語教育研究は,対象とする事象の複雑さや,現実世界への依存度に反して,もっぱら理論先行型の解析を主な方法論としてきました。しかし,近年では,データ駆動型と呼ばれる統計解析法が従来の方法論を一新しようとしています。例えば,ベイズ統計は,頻度主義下の統計学とは確率論に関して根本的に異なる認識に基づきますが,これによって,かつてないほど自由なモデリングが可能になりました。また,エデュケーショナルデータマイニングという新学際領域も生まれ,研究者の注目を浴びています。これらの新しいデータ駆動型解析法とその背景を,英語教育研究および教育業務において文脈化する作業は,私達英語教師にとって急務であると考えられます。ベイズ統計に関しては,ベイズ因子やベイズ信用区間による教育的処遇の効果検証を,データマイニングに関しては,自動採点やMOOCといった具体例を出しながら話題提供をさせていただきます。量的研究のあり方について,この機会に一緒に考えを深めませんか。
4 大学生・大学院生フォーラム(全国英語教育学会 学生支援部)
大学生・大学院生のための交流の場: 研究大会に参加している大学生及び大学院生を対象として,参加者間の交流を深める場とする。 司会: 名畑目真吾(共栄大学) 概要: 今年で第4回となる本フォーラムは,全国各地で学業,研究に励む大学生・大学院生が気軽に交流できる場を提供し,参加学生間の親睦を深めるとともに,英語教育の諸先輩方の話を聞いて英語教育への興味・関心をいっそう高めてもらうことを目的としています。埼玉研究大会における大学生・大学院生フォーラムは,学生のみなさんの交流を中心に行います。大会1日目のお昼休みの時間に参加者の皆さんで昼食をとりながら,普段なかなか知ることのできない他大学の卒業論文や修士論文,研究の進め方,ゼミの様子,教員採用試験に向けた準備などについて,学生間で情報交換を行います。この機会を利用して,同じ志を持った全国の学生の方々とたくさんの交流をしてください。本フォーラムは,学生だけのフランクな会です。お誘いあわせの上,ぜひ気軽に参加してみて下さい。
5 ランチョンセミナー
《セミナー1》思考力・判断力・表現力を育むライティング指導
講師: 大井恭子(清泉女子大学) 概要: 現行学習指導要領においては「思考力・判断力・表現力」を各教科を通じて育むことが求められている。英語科においては,この力はライティングの指導を通して涵養していくことが可能と考える。ことに「発信力の育成」が求められている今,中高を通じてライティングにより積極的に取り組んでいく必要がある。具体的には「まとまりのある一貫した文章を書く力」が求められている。評価がパフォーマンステストでなされることが推奨され,さらに英検2級においてもまとまりのある文章を書くことが試験に入ってくることを考えると,中学高校においてもより積極的にパラグラフ・ライティング、エッセイ・ライティングに取り組むことが期待されている。本セミナーにおいては,ライティング課題を出しても,「何をかいてよいのかわからない」という生徒に対してどのように導いて行ったらよいか,豊かな内容を産み出すためにはどのような手立てがあるのか,実践例を用いて紹介する。
《セミナー2》IRTに基づくテスト開発・運用
講師: 斉田智里(横浜国立大学) 概要: 高大接続答申で新テスト「高等学校基礎学力テスト(仮称)及び大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入が決定し,その具体的な在り方をめぐり記述式問題,段階別成績表示,年複数回の実施,CBT(Computer-Based Testing)などの導入方法が専門家会議で検討された。年複数回の実施やCBTの有効活用には,IRT(Item Response Theory)の導入が前提となる。IRTに基づくテスト開発では,「いつどこでだれがどの回のテストを受けてもスコアの比較が可能」といった大きなベネフィットが期待される一方で,その実現・運用にはかなりのコストとリスクを伴う。IRTをテストに適用しただけでは不十分で,得点比較のための「等化(equating)」が必要となる。平成28年3月31日の「最終報告」では,年複数回実施は当面見送り,CBT導入は継続検討となった。本セミナーでは,高大接続・入試改革に関する国の議論の動向を踏まえ,IRTに基づくテスト開発・運用について概観し,テスト実施目的の明確化が最適な方法選択にいかに必要かを論ずる。
《セミナー3》ビデオによる授業研究会-フォーカス・オン・フォームを取り入れたスピーキングの授業-
講師: 三枝幸一(山梨県都留市立都留第一中学校),杉田由仁(明治学院大学) 概要: 英語はもはや母語話者だけの財産ではなく,国内外の諸問題を解決していく上で世界共通語としての役割を果たしています。そのような時代にあって目指すべき英語使用者の姿や英語授業とはどのようなものなのでしょうか。「あなたは英語教師として何を教えていますか?」と問われたとき,何と答えたらよいでしょうか。このセミナーでは,生徒たちの人間的成長を促す内容やメッセージを大切にし,各技能を総合的に扱いながら英語力を伸ばしていく授業のあり方を,フォーカス・オン・フォーム アプローチによるスピーキングの授業ビデオを題材として考えていきたいと思います。
6 招待講演
題目: 英語教育における研究と教育の統合-科学的英語学習法を目指して- 講師: 原田康也(日本英語教育学会前会長・早稲田大学法学学術院・教授) 司会: 卯城祐司(全国英語教育学会会長・筑波大学) 概要: e-learningにより,オンラインの学習と測定を一体の活動として統合することが可能となっている。多くの言語試験において,一つの技能のみに依存する課題ではなく,聞いて書く,読んで話す,などの統合的課題が増えている。大学英語教科書を見ても,一つのスキルに特化した教材から統合的学習教材への変化を見ることができる。研究者であることも求められる大学の英語教員については,英語教育における研究活動と教育実践の統合が可能となり,求められる状況となっている。本講演では,大学生英語学習者の対話的活動,特に質問への応答と質問の産出を中心に,研究と教育の統合についての私見を述べる。
7 特別講演
題目: グローバル社会で求められる英語のリタラシー -小中高連携の視点から- 講師: アレン玉井光江(青山学院大学文学部・文学研究科教授) 司会: 松沢伸二(関東甲信越英語教育学会会長・新潟大学) 概要:グローバル社会は,大学卒業後の社会人にうわべだけのコミュニケーション力ではなく,本当の意味で使える「21世紀型リタラシー」としての英語力を求めている。本講演では,日本の英語教育の対応として,小学校・中学校・高等学校でどのように英語教育を改革していくべきかを,米国のリタラシー教育の取り組みから得られる教育的な示唆に基づいて指摘する。No Child Left Behindが終焉し,米国では初めて州の枠を超えた教育基準 ‘Common Core State Standards’ が設定された(「各州共通基礎スタンダード」)。これは算数と英語の基準だが,高い設定になっており,なかでもリタラシー教育の重要性が叫ばれている。この基準を越えるためにyoung adolescent learnersの教育,特にacademic language, writing, discussionが重要視され,思考の基礎となる言語教育と全ての教育の根幹にリタラシー教育があると捉えられている。
これまで研究者として教育現場で教え,教えられてきた講演者の経験を通して,教科化を迎える小学校英語のリタラシー・カリキュラム開発,小中高連携におけるアカデミック言語の発達などについてデータを持って紹介し,グローバル化社会を生きる日本の児童・生徒に求められる英語のリタラシーについて議論したい。なお本講演では,ハーバード大学教育大学院Catherine E. Snow教授とNonie K. Lesaux教授のリタラシー教育の取り組みを,各数分程度のビデオクリップにて紹介する。